懸念は天井を越え・・・私のアスベスト問題

 薬害、有害物質等への対応の遅れ・・・。これまで、国の無策により、幾多のかけがえのない命が犠牲になったことか。アスベストも然り。一部の学者や市民が早くから警鐘を鳴らし続けたにも関わらず、国は対策を怠りました。WHO(世界保健機関)では、1972年に石綿の発がん性を確認し、89年に使用禁止しているにもかかわらず日本は95年に青石綿と茶石綿の使用禁止、08年にやっと全面禁止という遅れた対策しか取りませんでした。続々と明らかになる犠牲者の数に空恐ろしさを感じながらこんな国の政治がまたもや許され続けるのかとやりきれない思いに駆られます。他人ごとでなく、アスベスト問題は私の問題でもあるからです。
【台所の天井にアスベストの吹きつけが】
“借り上げ社宅”に入って1年を過ぎた90年の秋、台所の大掃除で天井がフワフワしているのに気がつきました。まさかアスベスト?翌日会社の担当課に事情を話し調査の依頼をしました。数日後、調査会社の社員が来て、無防備にもアスベストの壁の一部を素手で剥ぎ取りビニールに入れ持ち帰りました。周辺にアスベストを飛散させて・・・・。
調査結果は青色アスベストの吹きつけとのこと。
会社からの最初の改修工事の提案内容は、「台所の天井だけなのでそのまま居住し、天井のアスベストを板で覆う」と言うものでした。早速私はアスベストの専門家に助言を依頼したところ、この工法では周辺にアスベストを飛散させ、根本的解決にならず、解体時のことも考慮して、厳正な除去工事が必要というものでした。20所帯の居住者の意思統一が必要でしたので、まずアスベストの危険性を共有化するためビデオ学習をしました。その後、飛散を最小限にとどめる工法を行うよう①東京都のアスベスト技術指針(国に先駆けたもの)に沿って除去工事と廃棄処分が出来る業者に請け負わせること②工事は集塵・換気装置のついたプラスチックシートで囲い周辺への飛散を防止すること③除去後、室内のアスベスト濃度調査の実施、など数点を提案しました。普通の工事に比べ費用がかなり高くなる為、会社は難色を示し何回も話し合いが行われましたが結局、大枠では受け入れてくれました。しかし①の業者については、東京都のアスベストに関する技術認証(だったと記憶)を受けた事業者でなく、会社が契約している業者に「都の指針」に沿ってやらせるので了解してほしい、と言うものでした。不安だけど工事の監視を依頼し合意しました。
【除去工事後、土の上にアスベストらしきものが】
工事は無事終わり、アスベストは完全に除去され、室内の空気濃度もゼロに近い値を示したとの報告書を受けました。やれやれ一件落着・・・・。
ところが、それからしばらくして、水道のポンプ室の裏側の土に青い塊が何箇所もあるのを見つけました。いくらなんでも、こんなところにアスベストを廃棄することはないだろう、と思いながら、子どもたちが遊ぶ場所でもあり確認の必要があると思い、会社の担当課に聞いてみました。
“まさか”が本当でした。調査の結果はアスベスト。早速、工事業者は問題の土をビニールに詰めて、新しい土を入れ替えました。現場責任者が謝罪に来たとき、「なぜこのようなことが起こったのか、都の指針に沿った処理が出来なかったのか」を問いましたが、「ビニールがやぶれたのかもしれない。原因が分からない」とはっきりした返答は最後まで聞けませんでした。
会社も最大限、居住者の意向に沿い安全性を優先したはずでした。しかし結果的には工事がずさんでアスベストの飛散を抑えることが出来ませんでした。その要因は、事業者のアスベストへの認識と技術があまりにも低かったからと言えます。90年と言えば、もうすでにアスベストの危険性は広く知られていながら、その取り扱いや処理方法に対して行政が厳しい規制と指導を徹底させていなかったからです。それ故、私たちの社宅の工事と比べられないほどのずさんな工事は、闇に埋もれ続けてきたと推測できます。
【わが町の公共施設は?】
社宅騒動の後、私は子どもたちの学校や公共施設が心配になり、当時の田無市(この時はまだ議員ではありませんでした)に問いました。除去を含め適正に処理しているとのことでした。しかしあれから15年たち、当時の安心の保障は、崩れています。
03年、文科省の「これまで対象外だった石綿1%以上含有する材料の適正な処理の通知」を受けて、西東京市では昨年“アスベスト対策関係者会議”を立ち上げ方針を出しました。その内容は“1%以上の石綿含有材料使用施設は、9施設(東伏見小など5校と住吉福祉会館など4施設)。学校に関しては、今年の夏休み中に東伏見小学校の中央と東階段の除去工事を実施しその他も3年以内に除去する”というものです。(詳しくはネットの森下議員または西東京ネットのHPをご覧下さい。)
先の新聞報道によると、文科省はこれまでの学校の石綿調査が不十分だった事から再調査するという。また新たな問題が起こる懸念もあります。
【アスベスト問題は政治の問題】
アスベスト公害が大きい社会問題になるにつけ、人の命を優先した予防原則の視点で常に都議会で提案し、同時に地域で調査活動を日々続けて来た生活者ネットの活動の必要性を再認識しています。
今後、アスベストの吹きつけが多く使われた50年代から70年代にかけての建築物の解体時期を迎えます。民間の建築物の実態が十分把握できていない中で、対応策も困難を極めますが、市民の皆様の意見を聞きながら、東京ネット都議会議員と連携し、被害拡大に歯止めをかけるどんな対策があるか考えていきたいと思います。
(市議会議員・渡辺かつ子)