参議院選挙前の憲法記念日に寄せて
今年は、憲法改正に向けたターニングポイントの年になるのではと言われています。今夏の参議院選挙を前に、参議院で与党が3分の2を取るのか否かが、その分水嶺といえます。
先日の4月29日のテレビ放映で、安倍総理は憲法9条改正に関し、「これからもずっと後回しにしてよいのか、思考停止している政治家、政党に考えてほしい」と2月の国会での発言に重ねて、改めて述べました。
憲法の条文のどれ一つも変えてはいけない、ということは確かにありません。しかし、日本国憲法は、基本的人権の尊重、平和主義、国民主権の三原則を人類普遍の原理に基づくものとし、「これに反する憲法は排除する」としており、安倍自民政権が目指す改憲は、原則を変えた改憲であり、それはもはや「改正」の域を超え別の憲法を持つということであり、国の体制を変えるということにほかなりません。
それどころか、憲法は権力者を縛るためのもの、という近代以降の普遍的考え方・立憲主義からしても、権力者が国民にあれこれ義務があるとする自民の改正案はすでに憲法ですらあらずといっても過言ではありません。
また、自民党は、現憲法の成立が押しつけであったことをもって、自主憲法の制定を唱えていますが、現憲法は、鈴木安蔵氏らの憲法研究会による憲法草案を参考にしており、9条についは、当時の総理大臣・幣原喜重郎の提案であったことが知られています。今年、それを証言する未公開資料が国立公文書館で発見された、とのテレビ報道もありました。
憲法、特に9条について、時に改正の声があがりながらも、70年間改正されなかったのは、怠慢でも、思考停止によるものでもなく「二度と戦場に若者を送り、殺したり、殺されたくない」という国民の強い意志のあらわれであり、その時々の市民が、平和憲法を守るために不断の努力をしてきたからです。70年間、国民は「改正しない」という意志で、この平和憲法を承認し続けてきたのです。
日本国憲法の平和主義、9条の先見性は世界でも高い評価を得て来ましたし、紛争多発と混迷の世界情勢の中で更なる存在感を増しています。市民レベルでの民間外交、海外支援に携わる人たちは、憲法9条をもつ日本人だからこそ安全に業務を果たし、海外からの信頼を得てきました。
9条を放棄し、軍需費を増やし、アメリカの軍事戦略に組み込まれ、日本をテロの危険にさらし、そしてテロ対策に多くの税金を投じる。今日本でこのような倒錯に身を置く財政的余裕などないはずです。
厚生労働省が2月8日に発表した毎月勤労統計調査の速報によると、2015年の働く人一人当たりの物価の影響を考慮した実質賃金は0.9%減で、4年連続のマイナスでした。貧困率の上昇は、塩崎厚生労働大臣も、1月の参議院予算委員会で認めています。
このうち3年間は安倍政権によるアベノミクス政策のもとでの現実です。
力による介入は、一度足を踏み入れれば、憎しみの連鎖が続くだけです。中東はその証左です。力によって平和が守れるなどという旧態依然の幻想に陥り、5兆5千億円という史上最大の防衛費に税金を費やしている場合ではありません。
生存権さえ脅かされる貧困の中に身を置く人々の、いのちを守ることにこそ、私たちの税金は使われるべきです。
日本国憲法には、9条だけでなく、生存権、個人の尊重、表現の自由などが規定され、それらは私たちの生活を守っています。
国民が国家の犠牲となることを良しとするような「昔」に戻ることは、断じてあってはならないのです。
改憲の流れにくさびを打ち、安倍政権の暴走を止める!
私たちは、日本国憲法の精神を未来に伝えていくために、7月の参議院選挙をこれまで以上に大事な選挙と捉え、全力でとりくんでいきます。
=2016年5月3日の憲法記念日を前に=